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草野源次郎博士 薬用植物を熱く語る 
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無題  投稿者:草野源次郎 投稿日:2008/03/12(Wed) 09:36 No.22

薬用植物を熱く語る 13 バイカオウレン
           新日本製薬(株)岩国本郷研究所顧問 草野源次郎
1. はじめに
 春先の園芸店でバイカオウレンCoptis. quinquefolia Miq.の鉢植えが売られていた。常緑であり、松などの盆栽の根元を飾るのにも適していると思われた。2月末日には花が終わりに近く、750円の元値が600円に値引きされていたので、1鉢を購入した。大形の鉢植えは1000円以上の値が付けられていた。本格的な薬用植物のキクバオウレンC. japonica MakinoとセリバオウレンC. japonica Makino forma brachypetata Makinoは、少々大形で、雌雄異株。雄株の花は目立つ。多数のおしべ、5弁の蜜弁化した花弁、5弁白色の花弁様のがく片。一方、雌株は花がさびしい。おしべがなく、めしべには数個の心皮がある。これら大形のオウレンは花壇などでの植栽に適しているが、バイカオウレンは小形で花が両性花でにぎやかであり、鉢植えに適している。バイカオウレンは低山の半陰地に生える。群生しているのを見たことがないので、多分に数が多くなく、貴重な植物であると思われる。花がウメの花を連想させる。山で種子を採集して増殖したと思われるが、小生が購入した園芸店では、株を仕入れて、鉢植えに仕上げたということであった。誰かが、その常緑の茎葉と可憐な花に注目し、園芸用に仕上げたのであろう。多くの人達が楽しみながら増殖し、野山に返してやるのもいいと思った。
2. バイカオウレンの植物情報
 バイカオウレンはキンポウゲ科オウレン属の小形多年草本である。葉は根元から多数生え、長さ約8cmの柄があり、その先端に掌状5裂の小葉があり、基部の葉片は2〜3片に浅く裂ける。葉の束の中心から約10cmの直立した花茎を出し、その先端に5弁白色花弁状のがく片が目立つ。花弁は有柄で黄色のひしゃく形となり蜜を蓄える。花が済むと、輪状に数個の袋果が並ぶ。成熟すると、袋果の先端の穴が大きくなり、種子が飛び出す。葉がウコギ(五加)の葉に似ていることからゴカヨウオウレンとも呼ばれる。高山に生えるミツバオウレンC. trifolia Salisb.より大形で、根茎は多少肥厚し、多数の黄色細根が生える。
3. バイカオウレンの薬学情報
 バイカオウレン(ゴカヨウオウレン)は小形であるためか、薬用としては利用されない。また、その含有成分に関する調査研究の報告も見当たらない。しかし、重要な薬用植物のキクババオウレンやセリバオウレンと同属植物であり、その根茎と細根は黄色で、強い苦味がある。これらのことから、バイカオウレンには、オウレン属植物に広く認められるベルベリンなどのアルカロイド類を含むと考えられる。数種のオウレン属植物のエキスでは抗菌、抗炎症、抗ストレス潰瘍などの作用があり、ベルベリンには抗菌、血圧降下、心臓抑制、抗炎症などをはじめ、多くの薬理作用が報告されている。大形のオウレン属植物は苦味健胃整腸薬、下痢止め薬、洗眼薬として用いられ、また、黄連解毒湯、黄連湯など多くの漢方薬に配合される。アメリカインデアンはミツバオウレンの根を嫌酒薬として使っていたといわれており、それよりは大形のバイカオウレンも利用価値があると思われる。園芸用に増殖し、薬学的価値を調査研究したいと思う。


無題  投稿者:草野源次郎 投稿日:2008/02/14(Thu) 16:01 No.21

  薬用植物を熱く語る 12 フクジュソウ
      新日本製薬(株)岩国本郷研究所顧問 草野源次郎

1. はじめに
 フクジュソウ(福寿草)は幸福と長寿の願いが込められた植物(または幸福を祝う植物)で、正月の祝花として珍重される。わが家でも正月に鉢植えを購入し、テーブル上において、茎が伸び、花が次々に咲くのを楽しんでいる。インターネットで検索すると、ヤフーのホームページだけで、平成20年2月現在で4万件を越える情報が蓄積されていた。園芸関係者からの情報が多いが、絶滅危惧種II、環境変化の指標植物、近縁植物との写真付き比較、薬用植物(毒草)としての情報なども取り上げられている。
2. 植物学的情報
フクジュソウAdonis amurensisはキンポウゲ科の多年草で、花の少ない冬〜初春に、鮮やかな花を咲かせる。黄金色花弁、黄色雄しべ、根元(子房)が緑色の雌しべはいずれも多数である。がく片は暗紫緑色に着色し、キンポウゲ科の特徴(がく片が有色)を示している。現在自生が減少しており、このまま推移すると100年で絶滅すると心配されている(絶滅危惧種II類)。関東北部から東北地方の林内でよく見られるが、九州では激減している。多分に園芸用に採集されたためである。
3.フクジュソウの薬学情報
 フクジュソウは身近な毒草であるが、誤食による事故などが少ないためか(誤食による命に係わる事故は報告されている)、現在のところ法律で規制されていない。毒成分は強心性ステロイド配糖体である。それらは比較的多くの植物に含まれるが、水溶性で腸管から吸収され難いが、作用時間が短く速く排泄されるグループと水難溶性で、腸管で吸収されやすく、長時間作用し、排泄され難くいグループに大別される。本植物の毒成分は前者に属し、キョウチクトウ科の植物(ストロファンツス、キョウチクトウなど)の毒成分に類似している。
 強心性ステロイド配糖体は薬効量と中毒量の差が小さく、中毒しやすいので、血中の薬物濃度を測定しながら治療に用いられる。血中濃度を測定できないところで、強心性ステロイド配糖体を利用するのは、危険を伴う。


無題  投稿者:草野源次郎 投稿日:2008/01/24(Thu) 15:52 No.20

          薬用植物を熱く語る 11 パセリ
新日本製薬(株)岩国本郷研究所顧問 草野源次郎
1. はじめに
 薬用植物学を学んだ者として、パセリPetroselinum crisp(セリ科)は重要な料理用香辛野菜にされる植物であるが、重要な薬用植物とは考えたことがない。それは1年生または2年生草本で、オランダゼリの和名で呼ばれることもある。花茎がつくと、株の老化が進むので、香草として葉を利用するためには、見つけ次第花茎を摘み取る。最近、植物につくアブラムシを退治するのに、パセリの熱水抽出溶液を噴霧するのがよいと教えてもらい、試みるようになった。パセリを植えると、その周りの植物にアブラムシがつかなくなるとも教えてもらった。効果があるように思われるが、もう少し、経験を重ねなければならない。
2. パセリの薬学情報
 パセリはトルコで糖尿病の治療に使われている。パセリの根は利尿薬にされる。タンニン類、フラボノイド類、トリテルペノイド類を含み、アピオースという変形糖と結合するアピーンというフラボノイドが有名である。強い薬理作用を示す成分を含まないとき、植物の抽出エキスは利尿作用を示す。含まれる無機物、特にカリウムの含量がある量に達するからであろう。
 種子にはアピオールという成分が含まれる。それはニクズクに含まれるミリスチシンに似ている。これらは子宮を刺激し、生理異状の改善に用いられる。量が多くなると、堕胎剤になる。堕胎薬として用いられるときに、麻痺を伴う神経炎が起こる。この麻痺は治療法がないと考えられていたが、1〜2年経過すると自然に治ったという。韓国ドラマ、「チャングムの誓い」で、ニクズク(ニクズク科)を含む料理を食べた王が麻痺性の神経炎を起こした。チャングムもその原因を調査しているうちに、味覚を失った。ニクズクに含まれるミリスチシンを多く摂取すると麻痺性の神経炎を起こすといわれてきた。パセリも種子に含まれるアピオールが原因と考えられたことがある。しかし、現在ではリン酸1分子に3分子のクレゾールがエステル結合した化合物によることが明らかにされている。そのような化合物がどのようなメカニズムで長期間続く麻痺性の神経炎を起こすかについては、解明されていない。パセリの種子を一時に大量に使わない注意が必要である。「チャングムの誓い」の著者は、ニクズクが麻痺性の神経炎を起こす可能性があることを知っていたのであろうか。
3. パセリの機能性に関する情報
 パセリは多くのセリ科植物に似て、芳香性成分を含み、料理用香草として、多くの料理に使われる。刻んでスープにいれたり、料理のつまにしたり、サラダとして生食する。ビタミン類を多く含み、健康野菜としても人気がある。寒さに強く、多くのハーブが枯れる冬でも、生きている。香草が手に入らないときに、パセリを大いに利用したい。そのエキスがアブラムシを退治するか、パセリの近くではアブラムシが増えないか、大変興味深いので、時間をかけて確認したいと考えている。


無題  投稿者:草野源次郎 投稿日:2007/12/10(Mon) 16:45 No.18

            薬用植物を熱く語る 10  チャ
         新日本製薬(株)岩国本郷研究所顧問 草野源次郎
1.はじめに
 チャCamellia sinensis L.(ツバキ科)は中国種var. sinensisとアッサム種var. assamica (Mast.) Kitamuraに分類される。原産地は中国奥地説が有力で、前者は長江に沿って広がり、後者はメコン川に沿って広がったと云われている。前者は緑茶の原料に、後者は紅茶の原料にされる。チャにはカフェインが含まれ、他のツバキ科植物とは違っている。
 わが国で広がっているのは中国種で、北限は青森県、経済採算ラインは茨城県と新潟県を結ぶ線で、その以南(西)に有名な生産地がある。晩秋から冬に5弁の白色花弁の花が咲く。多数の葯は黄色で、柱頭は3分する。果実は3個でき1年かけて成熟する。
 チャだけでなく、カフェインを含む飲み物(コーヒー、ココア、コーラ、ガラナ、マテチャなど)は、基原植物の科(アカネ科、アオギリ科、ムクロジ科、モチノキ科)が違っていながら、世界各地で同様に利用され、それらを嗜好した民族は高い文化を発達させたという。文化人類学的に興味ある説である。
カフェインを含まない茶剤もある。焙煎乾燥したものに白湯を注ぎ、ろ液を飲用するスタイルが踏襲されている。玄米茶、はとむぎ茶、はぶ茶、トチュウ葉茶、カキの葉茶、桑の葉茶、ゲンノショウコ茶、ドクダミ茶、ハーブテイなどである。
2.チャの薬学情報
 チャに含まれるカフェインは中枢神経を興奮させる。寝る前に緑茶や紅茶を飲むと、覚醒されてなかなか眠れない。カフェインは利尿作用も示す。中枢神経が活性化され、心臓の働きが亢進し、血行がよくなり、腎臓の働きも活性化され、利尿作用を示す。カフェインが直接腎臓の細胞に働き利尿作用も示す。
 テアニン(グルタミン酸エチルアミド)はチャの旨み成分であると共に、脳出血時などに、脳の細胞死を抑制する。チャの葉にはビタミンCやE,β―カロテンなども含まれる。
1. チャの機能性
 チャは病気を治すための医薬品というよりは、日常茶剤などとして用いられ、病気の予防効果を期待してきた。科学的調査もされ、感染症・食中毒、肥満、高脂血症・動脈硬化、高血圧、糖尿病、認知症、がん、ウイルス感染などに対するある程度の予防効果があるとされた。未解決の問題もあるが、チャに大量含まれるタンニンによる予防効果であると考えられている。
茶道は独特の文化であるが、茶剤を抜きにしては成り立たない。茶道とチャの機能性との間に何か関係があるのかどうかは不明であるが、興味深い問題である。


無題  投稿者:草野源次郎 投稿日:2007/11/22(Thu) 03:58 No.17

          薬用植物を熱く語る その9  トウワタ
              新日本製薬(株)岩国本郷研究所顧問  草野源次郎
はじめに
 最近、晩秋のホテルの玄関、店先、庭先など数箇所で、トウワタAsclepias curassavica L.の美しい花を見た。ハーブ類には分類されていないが、長期間花を楽しめる園芸植物であり、人を含む生態系に関与する薬用植物である。
 トウワタは唐綿で、「唐」は中国および諸外国から渡来した植物につけられる。「綿」はこの植物の種子に冠毛があり、ワタ(アオイ科)を連想したものである。熱帯アメリカ原産のガガイモ科ガガイモ属の植物で、わが国には江戸時代末期に渡来した。春〜秋にかけて、葉の付け根から花柄を伸ばし、先端に美しい5〜10個の花が次々に咲く。花冠は2重で、外側の5個の花冠はそり返り、成熟すると濃橙赤色になる。内側の黄色の副花冠の先端は5片に分かれる。その花はチョウ(蝶)を連想させ、数種の同属植物はbutterfly weedと呼ばれる。この植物の葉や茎に傷をつけると、乳白色の汁が分泌する。ミルク草(milk weed)と呼ばれた所以である。
トウワタとオオトウワタA. syriaca L.はオオカバマダラ(マダラチョウ科)の食草で、成虫が卵を産みつける。この植物には、強心性ステロイドを含み、毒性を示す。その毒成分はオオカバマダラをカケスなどの攻撃から護る。オオカバマダラは春にメキシコを発ち、アメリカ大陸を縦断し、カナダまで至り、北風に乗って、一気にメキシコに帰る。旅先の食草はトウワタかオオトウワタである。開発でそれらの植物が少なくなった地域では、アメリカの子供達がそれらの植物を植え、チョウの旅を助けると共に、便りを託している。
 アメリカ開拓時代に、ミルク病がはやった。植物が少なくなる秋に、放牧中の牛がトウワタなどを食べ、牛乳に毒成分が蓄積した。それとは知らずに、牛乳を飲み、中毒をした。衰弱し、ミルクを飲んだ。ミルク病が重篤化し、死亡した。
トウワタ・カバマダラ・カケス・(アメリカの子供達)、トウワタ・乳牛・ミルク病患者の間には毒成分が関与していた。化学生態学が取り上げる話題である。
薬学的情報
 強心性ステロイドは心不全の治療薬として利用される。少量は治療効果を示すが、少し多くなると、過量になり毒性を示す。トウワタなどは多数の強心性成分を含み、精製して利用するのが難しい。ジギタリス、ケジギタリス(ゴマノハグサ科)、ストロファンツス(キョウチクトウ科)などが強心性ステロイド薬の原料にされる。
その強心性ステロイド薬で治療を受けた心不全の患者が、がんにかかる率が低いことが注目された。強心性ステロイドが心筋細胞よりがん細胞に強い毒性を示すためであった。強心性ステロイド薬だけで、がんを治療するのは難しいと思われるが、いつの日か、研究が進み、他の抗がん剤などと併用されるかも知れない。

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